フルマラソン30キロの壁とは?足が止まる原因と後半まで粘るための対策
フルマラソンで「30kmまでは順調だったのに、そこから急に脚が動かなくなった」という経験はありませんか?
いわゆる「30キロの壁」は、単純な根性不足ではありません。
エネルギー不足、筋疲労、筋損傷、序盤のオーバーペースなど複数の要因が重なって起こると考えられています。
特に秋の大会へ向けて10月に長距離走を増やしているランナーは、ただ距離を踏むだけではなく、後半まで動き続けられる身体をつくることが重要です。
この記事では、フルマラソンで30キロの壁が起こる理由と、補給・ペース配分・トレーニングの見直し方、さらに持久力を支えるミトコンドリアと低酸素トレーニングの関係について解説します。
フルマラソンで「30キロの壁」が起こる主な原因

30キロの壁は、必ず30km地点で突然起こる現象ではありません。
20km台後半から35km付近にかけてペースが大きく落ちる状態を、一般的に「壁」と呼ぶことがあります。
原因は一つではなく、エネルギー供給と筋肉の疲労が重なって起こると考えるのが現実的です。
長時間走ることで糖質の利用可能量が減っていく
フルマラソンでは、筋肉や肝臓に蓄えられたグリコーゲンが重要なエネルギー源になります。
しかし、長時間の運動では体内に蓄えている糖質だけでは不足する場合があります。
Burkeらのレビューでは、長時間の持久系運動では運動中の糖質補給が重要で、1〜2.5時間程度の運動では1時間あたり30〜60g、2.5時間を超える競技では条件に応じて最大90g程度の糖質摂取が選択肢として示されています。
ただし、胃腸が受け付ける量には個人差があるため、大会本番で急に大量摂取するのではなく、ロング走の段階から自分に合う補給量やタイミングを確認することが大切です(Burke LM et al., Journal of Sports Sciences, 2011)。
筋肉へのダメージも後半の失速と関係する
30km以降に脚が動かなくなる原因は、エネルギー不足だけではありません。
Del Cosoらが市民ランナー40名を対象に行った研究では、マラソン後半のペース低下が大きかったランナーほど、レース後のミオグロビンやLDHなど筋損傷に関係する血液マーカーが高い傾向が確認されました。
この研究だけで筋損傷が失速の直接原因だと断定することはできませんが、後半までペースを維持するには、心肺機能だけでなく、長時間の着地や筋収縮に耐えられる脚の持久力も重要だと考えられます(Del Coso J et al., PLOS ONE, 2013)。
30キロの壁を防ぐにはペースと補給を前半から管理する

30kmを過ぎてから対策を始めても遅い場合があります。
後半の失速を減らすためには、スタート直後から運動強度とエネルギー消費をコントロールすることが重要です。
前半で飛ばしすぎない
大会では身体が元気な前半にペースを上げたくなりますが、予定以上のスピードで走ると糖質消費や筋疲労が大きくなり、後半のペース維持が難しくなる可能性があります。
特に過去の大会で30km以降に大きく失速した経験がある方は、「前半で貯金を作る」よりも、余裕のあるペースを守ることを意識しましょう。
ハーフ地点で「かなり頑張っている」と感じる場合は、後半に同じ強度を維持するのが難しくなることがあります。
目標ペースを練習で確認し、自分がどの程度の心拍数や自覚的なきつさなら長時間維持できるかを把握しておくことが大切です。
補給は「苦しくなってから」ではなく計画的に行う
エネルギー切れを感じてからジェルを摂取するのではなく、疲労が強くなる前から計画的に補給することが大切です。
Burkeらは、持久系競技では競技時間に応じて運動中の糖質摂取量を調整することを推奨しています。
ただし、推奨量をそのまま全員に当てはめる必要はありません。
ジェル、ドリンク、固形物など何が自分の胃腸に合うか、何分ごとなら無理なく摂取できるかをロング走で確認しておきましょう。
「補給もトレーニングの一部」と考え、大会本番と同じタイミングで試しておくことが30キロの壁対策につながります(Burke LM et al., Journal of Sports Sciences, 2011)。
30km以降まで粘るにはミトコンドリアを含む持久系能力を高める

マラソン後半まで身体を動かし続けるには、心肺機能や脚の持久力に加えて、筋肉が酸素を利用してエネルギーを作る能力も重要です。
その中心的な役割を持つのが、筋細胞の中にあるミトコンドリアです。
持久系トレーニングでミトコンドリアの量や機能が変化する
ミトコンドリアは、筋肉の中で酸素を利用してATPというエネルギーを作る器官です。
持久系トレーニングを継続すると、骨格筋のミトコンドリア量や呼吸機能に適応が起こることが報告されています。
Granataらのレビューでは、トレーニング量はミトコンドリア量の増加に、運動強度はミトコンドリアの呼吸機能の変化に関係する可能性が示されています。
つまり、「ミトコンドリアを活性化すれば30キロの壁がなくなる」と単純に考えることはできませんが、ミトコンドリア関連の適応は、長時間エネルギーを作り続ける持久力の土台の一つと考えられます(Granata C et al., Sports Medicine, 2018)。
低酸素トレーニングでミトコンドリア機能の変化を報告した研究もある
Ponsotらが持久系アスリート15名を対象に行った研究では、週2回・6週間、第二換気性閾値付近の強度で常圧低酸素トレーニングを行ったグループで、VO2max、第二換気性閾値での酸素摂取量、疲労困憊までの時間が改善しました。
また、筋生検ではミトコンドリア呼吸の調節がより酸化的な方向へ変化したことが報告されています。
一方、筋肉全体の酸化能力そのものが増加したわけではありません。
そのため、「低酸素環境でミトコンドリアが必ず増える」と断定するのではなく、低酸素トレーニングによってミトコンドリア機能に関わる適応が起こる可能性がある、と理解するのが適切です(Ponsot E et al., Journal of Applied Physiology, 2006)。
SOLERAでは、標高3,000m級に相当する常圧低酸素環境でトレーニングに取り組めます。
普段のランニングとは異なる酸素条件で心肺や持久系能力へ刺激を加えられるため、「走行距離だけを増やさずに持久力を高めたい」「30km以降も粘れる体力をつくりたい」というランナーが、ロング走やペース走と組み合わせて活用する選択肢になります。
ただし、低酸素トレーニングを行えば30キロの壁を必ず防げるわけではありません。
30km以降の失速には、補給、ペース配分、脚の筋疲労、気温や脱水など複数の要因が関係します。
低酸素トレーニングは、そうした対策の一つとして、細胞レベルのエネルギー産生に関わるミトコンドリアや心肺機能へ普段とは異なる刺激を加える方法として取り入れるのが適切です。
まとめ|30キロの壁は「補給・ペース・持久力」の3つから対策する

フルマラソンで起こる30キロの壁は、単純なスタミナ不足だけではありません。
長時間走ることによる糖質の減少、筋疲労や筋損傷、序盤のオーバーペースなどが重なって、後半の大きなペースダウンにつながる可能性があります。
過去に30km以降で脚が止まった経験がある方は、まず前半のペース、補給のタイミング、ロング走の内容を振り返ってみましょう。
また、後半まで粘れる身体をつくるには、心肺機能や脚の持久力だけでなく、筋肉が酸素を使ってエネルギーを作り続ける能力も重要です。
持久系トレーニングではミトコンドリアの量や機能に適応が起こることが報告され、低酸素トレーニングでもミトコンドリア機能に関わる変化が確認された研究があります。
SOLERAでは、常圧低酸素環境を活用し、普段とは異なる酸素条件で心肺機能や持久系能力へ刺激を加えるトレーニングに取り組めます。
「過去のフルマラソンで30km以降に足が止まった」「次の大会では後半まで粘れる身体をつくりたい」という方は、ロング走や補給練習と組み合わせるトレーニングの一つとして、まずはSOLERAで低酸素トレーニングを体験してみてください。
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