40代の初フルマラソン ― 6ヶ月で積み上げる練習メニューと故障予防の設計
40代で初めてのフルマラソン完走を目指す場合、目安となるのは 6ヶ月間の段階的な積み上げと、40代特有の回復力低下・故障リスクを織り込んだ設計です。
20代・30代と同じメニューを踏襲すると挫折や故障につながるため、中年層に現実的な週間メニューと注意点を整理します。
開始前に医療機関でのメディカルチェックを受けることが推奨されます。
結論:40代は「6ヶ月・週4回・故障予防重視」で積み上げる

40代がフルマラソン完走を目指す視点は次の3点です。
- 準備期間は6ヶ月:3ヶ月では月間走行距離が積み上がらず、故障リスクも上がる
- 週4回の練習と週3回の休養:40代の回復力を織り込むと、休養日を確保する設計が現実的
- 強度より距離と継続を優先:初完走ではペースを追わず、月間走行距離を段階的に積み上げる
40代は20代の頃に走れていた層でも、体は同じではありません。
回復力の低下・関節への負担・時間制約を織り込んだ設計で、6ヶ月かけて土台を作る流れが完走への近道となります。
40代特有の事情 ― 20代・30代と何が違うか?

回復力の低下
30歳を過ぎると、運動後の疲労回復にかかる時間が長くなる傾向があります。
若い頃なら翌日に抜けていた疲労が、40代では2〜3日残るケースが増えます。
加齢した筋肉では細胞外マトリックスの硬化・ミトコンドリア機能障害・炎症の慢性化・サテライト細胞機能の変化が重なることで、運動誘発性筋損傷後の回復が遅延・延長・非効率化することが示されています(Li DCW et al., Cells, 2024, PMC10854791)。
同じ練習量でも回復が追いつかず質の低い練習を重ねる形になりがちです。
「毎日走る」は避け、休養日をトレーニングの一部と位置づけることが基本です。
関節・靱帯への負担
膝・足首・腰への継続的な負担が、40代以降では故障につながりやすくなります。
長年のデスクワークによる姿勢の癖・筋量の緩やかな低下・関節軟骨の変化などが背景となります。
加齢に伴う腱のコラーゲン代謝の変化・力学的特性の低下が中年期以降に生じることが示されており(Role of extracellular matrix in adaptation of tendon and skeletal muscle to mechanical loading)、ランニングだけに絞らず自転車・水泳・エリプティカルなど衝撃の少ない種目と組み合わせる設計が推奨されます。
心血管系リスクの上昇
40代以降は、高血圧・脂質異常症・糖尿病など生活習慣病の発症リスクが上がる年代です。
フルマラソンは長時間の高強度運動になるため心血管系への負担が大きい種目です。
40代以上の運動開始前には医師による心血管リスク評価が推奨されており(Fletcher GF et al., Circulation, 2013, PMID: 23877261)、無症状の心疾患が潜在していないか確認することが基本手順です。
健康診断で指摘のある方は必ず主治医に相談してください。
VO2maxと持久力の水準
VO2maxは30歳を過ぎると10年ごとに約10%低下するとされます(Letnes JM et al., Int J Cardiol Cardiovasc Risk Prev, 2023, PMID: 36874046)。
厚労省の男性40〜59歳の基準値は35 ml/kg/分・女性同世代は30 ml/kg/分(厚生労働省「健康づくりのための身体活動基準2013」)。
まずこの水準を維持していれば、フルマラソン完走の心肺機能的な土台としては十分と考えられます。
時間制約の現実
40代は仕事の責任・家庭の役割が大きい世代です。
「週5回1時間ずつ走る」ような設計は現実的でないケースが多く、週4回・1回45〜75分程度に収める設計が現実的です。
週3〜5日の中強度有酸素運動が心肺機能の維持・向上に推奨されており(Garber CE et al., Medicine & Science in Sports & Exercise, 2011, PMID: 21694556)、長時間の練習は週末の1回に集約する形が実践的とされます。
6ヶ月の月別プラン

第1〜2ヶ月:土台作りフェーズ
- 目的:走る習慣を身につけ、月間走行距離を安定させる
- 月間走行距離目安:60〜100km
- メニュー:週3〜4回、1回30〜60分のジョギング(会話ができるペース)
- 注意:無理せず、走れない日は歩きに切り替える。ペースは追わない
この2ヶ月は「走る筋肉と関節を作る期間」と割り切ります。
距離を追うと故障するので、時間ベースで進めるのが安全です。
第3〜4ヶ月:距離延長フェーズ
- 目的:長距離への耐性を作る
- 月間走行距離目安:100〜150km
- メニュー:週4回、うち週末に長距離走(15〜25km)を組み込む
- 注意:長距離走の翌日は完全休養か軽い有酸素で回復優先
30km走までは経験しなくてもよいですが、25km 前後を月2回程度は経験しておくことが完走への安心材料になります。
第5ヶ月:ピーク前調整フェーズ
- 目的:レース感覚を作る、体力のピークを整える
- 月間走行距離目安:120〜150km
- メニュー:週4回、長距離走 25〜30km を月1〜2回、テンポ走を週1回
- 注意:この時期に無理な追い込みは避ける。故障の芽があれば練習量を落とす
30km走を1〜2回経験しておくと、後半失速への心理的な備えになります。
ただし故障リスクを考えると必須ではありません。
第6ヶ月:テーパリング(調整)フェーズ
- 目的:疲労を抜き、当日のコンディションを整える
- 月間走行距離目安:レース2週前から段階的に減量
- メニュー:レース2週前は距離を60%程度、1週前は40%程度に落とす
- 注意:休むことに罪悪感を持たない。抜けきらない疲労はレースで足を止める要因
テーパリング期間の減量を怠ると、レース当日に脚が重くなるケースがあります。
しっかり休むことが基本です。
週間メニュー例と故障予防の工夫

週間メニュー例(第3〜4ヶ月フェーズ)
- 月:完全休養
- 火:ジョギング 45分(会話ペース)
- 水:休養 or 自転車・水泳 30分
- 木:ジョギング 45分+動的ストレッチ
- 金:完全休養
- 土:長距離走 15〜25km
- 日:軽いジョギング 30分 or 休養
週4回のラン+週2〜3回の休養・クロストレーニングという構成です。
強度は基本ゾーン2(会話ができるペース)で、月に1〜2回テンポ走を挟む形が実用的です。
故障予防の基本
- 靴選び:クッション性の高いモデル、500〜600kmで買い替え
- フォームの見直し:着地衝撃を分散するフォーム(過度なかかと着地を避ける)
- 筋トレの併用:週1〜2回、体幹・臀部・下肢の筋トレを組み込む
- 柔軟性の維持:練習後の静的ストレッチ、入浴後の軽いストレッチ習慣
- 痛みへの対応:違和感を感じたら数日休む。無理して悪化させると数ヶ月失う
低酸素環境という選択肢
当スタジオSOLERAでは、常圧低酸素環境でのトレーニングを提供しています。
標高2,000〜3,000mに相当する酸素濃度で運動することで、通常の環境より低い運動強度で心肺系に刺激を与える設計です。
低酸素環境では低い運動出力でも内的負荷指標が維持されることが示されており(Li SN et al., European Journal of Sport Science, 2024, PMC11680552)、関節への負担を抑えつつ心肺機能への刺激を組み込みたい40代ランナーに、通常のロード走との併用として活用されています。
個人差はあり、既往のある方は医師にご相談ください。
栄養・睡眠
長距離練習の週は特に、タンパク質・糖質・鉄分の確保が重要です。
タンパク質の継続的な補給がマラソン後の運動誘発性筋損傷マーカーを有意に低減することが示されており(Röhling M et al., Nutrients, 2021, PMC8472015)、糖質摂取量が少ないランナーでは炎症マーカーが高値になる傾向があることも報告されています(Passos BN et al., Mediators of Inflammation, 2019, PMC6800895)。
睡眠は7〜8時間を目安に、睡眠不足は心拍数の回復を遅らせ練習の質を下げることが示されていることから(Fullagar HH et al., Sports Medicine, 2015, PMID: 25315456)、寝不足の週は練習強度を落とす調整が推奨されます。
よくある質問(FAQ)

Q. 6ヶ月で本当に完走できますか?
未経験者が6ヶ月間のロンドンマラソン練習プログラムで完走を達成した研究では、完走タイムから推計した週あたりの練習量が6〜13マイル(約10〜21km)という比較的低い水準であったことが報告されており、現実的な練習量での完走が可能であることが示されています(Bhuva AN et al., Journal of the American College of Cardiology, 2020, PMID: 31918835)。
ただし個人差があり、故障や体調不良で中断する期間があると準備期間は長引きます。
焦らず土台を作ることが結果につながります。
Q. 週何回走ればいいですか?
40代なら週4回のラン+週2〜3回の休養(またはクロストレーニング)が現実的な範囲です。
毎日走ると回復が追いつかず、質の低い練習を重ねる形になりがちです。
休養もトレーニングの一部です。
Q. 30km走は必須ですか?
必須ではありませんが、25〜30km を月1〜2回経験しておくと、レース後半への心理的備えになります。
ただし故障リスクを考えると、体調と相談しながら判断してください。
Q. 開始前に何を確認すべきですか?
医療機関でのメディカルチェック(心電図・血圧・血液検査など)が第一歩です。
健康診断で指摘のある方、家族に心疾患既往がある方は、主治医に相談のうえ運動プログラムを組んでください。
Q. 練習中に膝や足首が痛くなったらどうすればいいですか?
違和感を感じた時点で数日休むことが基本です。
無理して続けると悪化して数ヶ月走れなくなるケースがあります。
痛みが続く場合は整形外科の受診も選択肢に。
休むことは負けではなく、完走への近道です。
まとめ:6ヶ月・週4回・故障予防を軸に

- 40代の初フルマラソンは6ヶ月の準備期間を目安に、段階的な積み上げが基本。
- 週4回のラン+週2〜3回の休養・クロストレーニングで回復を優先。
- 開始前のメディカルチェックと、故障予防(靴・フォーム・筋トレ・柔軟性)が完走への土台。
- 距離を伸ばす期・調整期を分けた設計で、無理なく本番を迎える。
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