最大心拍数の正確な求め方|220-年齢より精度が高い計算式と実測法
「220-年齢」で最大心拍数を計算したものの、ランニング中の数値や体感と合わないと感じていませんか?
結論からいうと、年齢を使う計算式だけで個人の最大心拍数を正確に求めることはできません。
ただし、「208-0.7×年齢」など、研究データに基づく推定式を使えば、220-年齢より実測値に近い目安を得られる可能性があります。
この記事では、最大心拍数の求め方と計算式ごとの違い、実測する際の注意点を解説します。
最大心拍数の求め方|正確な計算式はある?

最大心拍数とは、運動強度を段階的に上げたときに到達する、1分間当たりの心拍数のほぼ上限です。
一般的にはbpmという単位で示され、運動負荷試験の評価やトレーニング強度の設定に利用されます。
ただし、年齢を入力するだけの計算式で分かるのは、あくまで集団データから予測した数値です。
最大心拍数を正確に知るには実測が必要
個人の最大心拍数を最も直接的に確認する方法は、トレッドミルや自転車エルゴメーターを使い、運動負荷を段階的に高める運動負荷試験です。
Shooksterらは、ガス交換や換気量を測定しながら行う段階的運動負荷試験を最大心拍数評価の基準となる方法として説明しています。
ただし、実測値は本人が十分な努力を続けられたか、測定方法や運動種目が適切だったかによっても変わります。
計算式より個人に即した数値を得られる一方、測定した値が絶対に変わらない上限というわけではありません(Shookster D et al., International Journal of Exercise Science, 2020)。
年齢を使う計算式は個人の上限ではなく推定値
最大心拍数は年齢とともに低下する傾向があるため、年齢を変数にした推定式が使われています。
しかし、同じ年齢でも実測値には幅があります。
Tanakaらが351研究のデータと514人の運動負荷試験を解析した研究では、推定式の標準誤差はおよそ7~11拍でした。
計算結果が170bpmの場合でも、実際の値がそれより10拍程度高い、または低い可能性があります。
推定値は運動強度を考える出発点にはなりますが、「この心拍数を超えてはいけない」「ここまで上がらなければ運動不足」と判断する基準にはできません(Tanaka H et al., Journal of the American College of Cardiology, 2001)。
「220-年齢」が正確とは限らない理由

220-年齢は、最大心拍数を簡単に求められるため広く知られています。
例えば50歳なら170bpmです。
しかし、使いやすさと個人への正確さは同じではありません。
式の由来や検証方法を理解したうえで、目安として利用する必要があります。
220-年齢は十分に検証された回帰式ではない
RobergsとLandwehrが最大心拍数推定式の歴史を検討した論文では、「220-年齢」は特定の一つの研究から厳密に導かれた回帰式ではなく、過去の複数データをまとめた観察的な推定に由来すると指摘されています。
その後、運動処方やトレーニング現場で広く使われるようになりましたが、個人差を小さくできる式ではありません。
分かりやすさには利点があるものの、スマートウォッチの表示や実際の運動時心拍数と一致しないことは珍しくありません。
数値が体感と合わない場合でも、ただちに測定異常や身体の問題を意味するわけではありません(Robergs RA, Landwehr R, Journal of Exercise Physiologyonline, 2002)。
年齢が上がるほど実測値を低く見積もる場合がある
Tanakaらは、従来の220-年齢が高年齢層の最大心拍数を低く見積もる可能性を報告し、健康な成人向けに「208-0.7×年齢」を提案しました。
50歳では173bpm、60歳では166bpmとなり、220-年齢よりそれぞれ3拍、6拍高くなります。
ただし、この式も集団の平均的傾向を表したもので、個人の最大心拍数を確定するものではありません。
また、同研究では最大心拍数と年齢の関係は性別や日常的な身体活動量によって大きく変わらないと報告されていますが、服薬や健康状態などは別に考慮する必要があります(Tanaka H et al., 2001)。
最大心拍数を求める代表的な推定式

最大心拍数の推定式には複数の種類があります。
どれか一つがすべての人に最も正確というわけではないため、対象となった集団や研究方法を理解して選ぶことが重要です。
まずは複数の式で計算し、数値にどの程度の差が出るか確認するとよいでしょう。
健康な成人では「208-0.7×年齢」が有力な選択肢
Tanaka式は幅広い年齢の健康な成人を対象とした大規模な解析に基づき、現在も代表的な推定方法として引用されています。
例えば40歳では180bpm、50歳では173bpm、60歳では166bpmです。
220-年齢と比べると若年層では大きな差がなく、年齢が高くなるにつれて差が広がります。
数値を計算しやすく、一般的な健康づくりやランニングで最大心拍数の目安を置く際に利用できます。
ただし、推定誤差は残るため、小数点以下まで細かく計算しても個人への精度が高まるわけではありません(Tanaka H et al., Journal of the American College of Cardiology, 2001)。
HUNT Fitness Studyでは「211-0.64×年齢」を報告
Nesらは、健康な男女3,320人が最大運動負荷試験を行ったHUNT Fitness Studyのデータから、「211-0.64×年齢」という式を報告しました。
この式では40歳で約185bpm、50歳で179bpm、60歳で約173bpmとなります。
Tanaka式より高い数値が算出されますが、どちらかがすべての人に正しいという意味ではありません。
研究対象者や最大努力の判定方法などが異なれば、得られる回帰式も変わります。
複数の式で数値に差が出ること自体が、最大心拍数を年齢だけで正確に予測する難しさを示しています(Nes BM et al., Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports, 2013)。
| 推定方法 | 計算式 | 50歳の推定値 | 位置づけ |
|---|---|---|---|
| 一般式 | 220-年齢 | 170bpm | 簡便だが個人誤差が大きい |
| Tanaka式 | 208-0.7×年齢 | 173bpm | 幅広い年代の健康な成人を解析 |
| HUNT式 | 211-0.64×年齢 | 179bpm | 3,320人の最大運動負荷試験から算出 |
最大心拍数を実測するときのリスクと安全な選択肢

推定式より正確な数値を知るには実測が必要ですが、最大心拍数を確認するテストは全力に近い運動を伴います。
日頃から運動している人でも、自己流で急に負荷を上げる方法は勧められません。
体調や既往歴に応じて、測定の必要性と方法を判断することが大切です。
自己流の全力テストは身体への負担が大きい
坂道ダッシュや長いインターバルを繰り返し、心拍数が上がらなくなるまで追い込む方法が紹介されることがあります。
しかし、最大努力に近い運動では心拍数、血圧、心筋の酸素需要が大きく上昇します。
AHAの運動負荷試験に関する科学声明では、検査前のリスク評価、適切な測定機器、症状や心電図などに基づく中止基準、緊急時への備えが重要とされています。
胸痛、通常とは異なる強い息切れ、めまい、失神しそうな感覚、動悸がある場合は、心拍数にかかわらず運動を中止し、必要に応じて医療機関へ相談してください(Fletcher GF et al., Circulation, 2013)。
正確性を求めるなら医療機関の運動負荷試験を検討する
心疾患の既往がある方、生活習慣病の治療中の方、運動時に胸部症状や強い息切れがある方は、自己判断で最大心拍数を測らず、医療機関へ相談することが重要です。
医療機関の運動負荷試験では、トレッドミルや自転車エルゴメーターの負荷を段階的に上げながら、心電図、血圧、症状などを確認できます。
呼気ガス分析を伴う心肺運動負荷試験ではVO2peakなども評価できます。
検査の実施可否や目的は医師が判断するため、「正確な数値を知りたい」という理由だけで全員に必要な検査ではありません(Fletcher GF et al., 2013)。
まとめ|計算式を目安にして無理のない負荷管理を

最大心拍数を個人単位で正確に求めるには、全力に近い段階的運動負荷試験が必要です。
年齢を使う推定式の中では「208-0.7×年齢」や「211-0.64×年齢」が研究に基づく選択肢ですが、どちらにも個人誤差があります。
「220-年齢」と実感が合わない場合は、別の式で計算するとともに、推定値を絶対的な上限として扱わないことが大切です。
また、最大心拍数を知ることと、実際のトレーニングを安全かつ効果的に進めることは別の課題です。
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