【ノーベル賞受賞・制御性T細胞】免疫を“鍛える”という発想──制御性T細胞と低酸素トレーニングの共通点
制御性T細胞とは?──「免疫のブレーキ」を担う存在

免疫の暴走を防ぐ制御性T細胞(Treg)とは
私たちの身体には、ウイルスや細菌などの“外敵”を攻撃するための免疫システムが備わっています。
しかし、この免疫反応が強すぎると、自分自身の細胞までも攻撃してしまうことがあります。
この“暴走”を防ぐ役割を担っているのが、制御性T細胞(Regulatory T cell:Treg)です。
Tregは、免疫反応の中で過剰に働くリンパ球に「もう攻撃をやめなさい」とブレーキをかける存在。
免疫の“アクセル”に対して“ブレーキ”の役割を果たし、体内のバランス(恒常性)を保っています。
つまり、Tregがあるからこそ、人間の身体は「攻撃」と「抑制」をバランス良くコントロールできているのです。
この仕組みが崩れると、アレルギーや自己免疫疾患など、免疫の誤作動による病気が発症しやすくなります。
坂口志文・大阪大学特任教授の発見とノーベル賞への注目
2025年、スウェーデンのカロリンスカ研究所は、
大阪大学免疫学フロンティア研究センター特任教授・坂口志文氏(京都大学名誉教授)ら3名にノーベル生理学・医学賞を授与すると発表しました。
坂口教授は1995年、制御性T細胞の目印となる分子「CD25」および転写因子「Foxp3」を発見し、
世界で初めてTregが存在することを明確に示しました。
この発見は、「免疫にはブレーキ機構が存在する」という概念を打ち立て、
それまでの「免疫=強いほど良い」という常識を覆した歴史的成果です。
坂口氏の研究は現在、以下のような医療応用にも発展しています。
- 自己免疫疾患(リウマチ・1型糖尿病・多発性硬化症など)の治療
- 臓器移植後の拒絶反応抑制
- がん免疫療法やアレルギー治療への応用
さらに、iPS細胞からTregを作製する技術も進み、再生医療と免疫学の融合という新たな領域を切り拓いています。
坂口教授の受賞は、日本人として6人目の生理学・医学賞であり、京都ゆかりの研究者としては16人目の快挙となりました。
制御性T細胞(Treg)の働きが乱れると何が起きる?(炎症・自己免疫・老化)
制御性T細胞の働きが低下すると、免疫は自分の身体を敵と認識してしまうことがあります。
これが「自己免疫疾患」と呼ばれる病気の本質です。
たとえば、以下のような疾患が代表的です。
- 関節リウマチ(自己の関節を攻撃)
- 1型糖尿病(膵臓のβ細胞を攻撃)
- バセドウ病(甲状腺を過剰刺激)
また、近年の研究では、Tregの減少や機能低下が「慢性炎症」や「老化(inflammaging)」とも関係していることが報告されています。
つまり、Tregは単なる“免疫の抑制細胞”ではなく、「回復」や「再生」を司る免疫の賢者のような存在なのです。
体内でTregが適切に働くことで、炎症が収まり、細胞修復がスムーズに進み、
結果として、老化や生活習慣病のリスクも低下します。
免疫を“鍛える”という新しい考え方

免疫は「強ければ良い」わけではない
多くの人が「免疫=強いこと」と考えがちですが、実際に大切なのは**“バランス”**です。
免疫が弱すぎると感染に負け、強すぎると自分の体を攻撃して炎症やアレルギーを引き起こします。
つまり理想の免疫とは、必要なときにすぐ反応し、不要になれば静まること。
スポーツでいえば、「常に全力で走る」よりも「オンとオフを切り替えられる」身体が強いのと同じです。
炎症を抑え、再生を促す「免疫バランス」
免疫には、外敵と戦う“攻撃フェーズ”と、ダメージを修復する“回復フェーズ”があります。
この切り替えがスムーズでないと、炎症が長引き、老化や疲労の原因になります。
大切なのは、炎症を必要な分だけ起こし、終わらせる力を持つこと。
それが「免疫を鍛える」という本来の意味です。
Treg細胞が担う“抑制と修復”
この切り替えを指揮しているのが、坂口志文教授が発見した制御性T細胞(Treg)です。
Tregは「免疫のブレーキ」として働き、炎症を抑えつつ、同時に組織の修復を促す役割を持ちます。
具体的には、
- 炎症を鎮める物質(IL-10、TGF-βなど)を分泌
- 過剰な免疫反応をストップ
- 損傷した組織の再生をサポート
Tregがしっかり働くことで、体は「攻撃 → 修復」の流れをスムーズに切り替えられます。
つまり、強さと回復力を両立する“しなやかな免疫”こそ、健康やパフォーマンスの土台なのです。
低酸素環境がもたらす生理的適応

低酸素刺激で働く「HIF-1α(低酸素誘導因子)」とは
低酸素環境では、体が酸素不足を感知してHIF-1αという遺伝子スイッチが作動します。
これにより、
- 赤血球を増やす(EPO分泌) → 酸素を運ぶ力が上がる
- 毛細血管を増やす(VEGF活性化) → 筋肉に酸素が届きやすくなる
- エネルギー代謝を改善 → 酸素が少なくても動ける体に
といった適応反応が起こります。
血流改善・ミトコンドリア増加・抗酸化力の向上
低酸素刺激によって、
- 血流が良くなり、疲労物質が溜まりにくくなる
- ミトコンドリアが増えて、エネルギーを効率的に生み出せる
- 抗酸化酵素が活性化して、筋肉の回復力が高まる
などの変化が起こります。
これらはすべて持久力アップや回復力向上に直結する重要な要素です。
運動による一時的な低酸素が“再生モード”を引き出す
強度の高い運動で一時的に低酸素状態になると、体は修復・再生モードに切り替わります。
炎症を早く抑え、筋肉や血管の再生を促すため、疲労が残りにくく、次の練習への回復が早くなるのが特徴です。
短時間(30分程度)でも、低酸素下での運動は体を“再構築”させる強力な刺激になります。
効率よく強く、そして回復しやすい身体づくりに最適なトレーニング環境です。
制御性T細胞と低酸素トレーニングの共通点

「過剰反応を抑え、回復力を高める」メカニズムの一致
制御性T細胞(Treg)は、免疫の暴走を防ぎ、必要なときだけ反応し、過剰な炎症を抑える役割を持ちます。
一方、低酸素トレーニングも「強い刺激を与えつつ、回復力を高める」メソッド。
どちらも、刺激(ストレス)と抑制(リカバリー)のバランスを最適化する点で共通しています。
つまり、Tregが“免疫のブレーキ”であるように、低酸素刺激も身体にとっての“適度な負荷”として、過剰反応を抑えながら再生を促す働きを持ちます。
HIF経路と免疫制御の科学的関連(Tregとの関係性)
低酸素環境では、HIF-1α(低酸素誘導因子)というタンパク質が活性化されます。
このHIF経路はTregの分化や機能に深く関与しており、炎症抑制・免疫バランス維持に寄与することが明らかになっています。
実際に、低酸素刺激が自己免疫疾患の緩和や組織修復の促進につながることも報告されています。
つまり、低酸素トレーニングは単なる運動刺激ではなく、細胞レベルで免疫のバランスを整える働きを持っているのです。
ストレス耐性・炎症制御・自己修復の観点から見る相乗効果
Tregと低酸素適応には、共通して次の3つの効果が見られます:
- ストレス耐性の向上:外的刺激に対して過剰に反応しない安定した身体状態をつくる
- 炎症の制御:運動や疲労で生じる炎症を速やかに収束させる
- 自己修復の促進:損傷した組織の再生や回復を早める
このように、制御性T細胞の働きと低酸素トレーニングの効果は、どちらも「整える」ことに本質があるといえます。
“鍛える”だけでなく、“回復させる力を育てる”──その点で、両者は非常に似た生理学的アプローチなのです。
低酸素トレーニングで免疫を整えるという選択

アスリートだけでなく、現代人の「炎症疲労」にも有効
低酸素トレーニングは、持久力向上やVO₂max改善だけでなく、免疫や炎症のバランスを整える効果も注目されています。
慢性的な疲労やストレス、睡眠不足などによって体内では“炎症疲労”が起こり、免疫機能が乱れがちになります。
低酸素環境での運動は、このような慢性炎症を軽減し、体を「回復しやすい状態」にリセットする役割を果たします。
つまり、これはアスリートだけでなく、働く人・疲れやすい人・免疫低下を感じる人にも有効なトレーニングです。
自律神経・ホルモンバランス・免疫調整の三位一体効果
低酸素下での運動は、交感神経と副交感神経の切り替えを促し、自律神経のバランスを整えます。
また、ストレスホルモン(コルチゾール)や成長ホルモンの分泌リズムを整えることで、免疫系の過剰反応を抑制し、回復を早めることがわかっています。
このように低酸素トレーニングは、神経・ホルモン・免疫が連動して働く“身体全体の調律”を助けるアプローチなのです。
ストレスに“適応できる身体”をつくる運動科学
低酸素環境という軽いストレスを定期的に与えることで、体は「適応力」を高めます。
これは免疫細胞や代謝系の“トレーニング”でもあり、ストレスに強く、疲れにくい身体をつくる科学的な方法です。
つまり、低酸素トレーニングは「鍛える運動」であると同時に、「整える運動」でもあります。
心身のコンディションをトータルで高めたい現代人にとって、まさに次世代のウェルネス・トレーニングといえるでしょう。
まとめ|「免疫を鍛える」という新時代のトレーニングへ
近年の研究で、免疫は「強くする」だけでなく「整える」ことが健康とパフォーマンスに直結することが明らかになってきました。
制御性T細胞(Treg)が免疫のブレーキとして働くように、低酸素トレーニングもまた、身体の過剰反応を抑えながら回復力を高める“調整型トレーニング”です。
要点まとめ
- 制御性T細胞(Treg)は免疫の過剰反応を防ぎ、炎症を抑える働きをもつ。
- 低酸素トレーニングではHIF-1αが活性化し、血流・代謝・抗酸化の仕組みが整う。
- 両者に共通するのは、「刺激と回復のバランス」を最適化するメカニズム。
- 慢性炎症・疲労・ストレスによる免疫の乱れを整え、“再生する身体”をつくる。
- アスリートだけでなく、現代人の健康維持・老化予防にも有効。
「鍛える」から「整える」へ。
これからの時代のトレーニングは、筋肉や心肺だけでなく、免疫や回復力までもデザインすることが求められます。
低酸素トレーニングは、その最前線にある“免疫を鍛える科学的アプローチ”といえるでしょう。
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