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目標心拍数の計算方法|カルボーネン法で運動強度を設定する方法

「最大心拍数の60%で運動すればいい」と聞いたものの、自分には強すぎる、または軽すぎると感じたことはありませんか?
目標心拍数をより個人に合わせて設定する方法の一つが、安静時心拍数を加味する「カルボーネン法」です。
最大心拍数だけで計算する方法とは異なり、最大心拍数と安静時心拍数の差である「予備心拍数(Heart Rate Reserve:HRR)」を利用します。
この記事ではカルボーネン法の計算方法、単純な%最大心拍数との違い、運動強度を設定するときの注意点を解説します。

カルボーネン法とは?目標心拍数を計算する基本

カルボーネン法とは?目標心拍数を計算する基本

カルボーネン法は、最大心拍数だけでなく安静時心拍数を含めて目標心拍数を設定する方法です。
人によって安静時の心拍数が異なることを計算に反映できるため、同じ最大心拍数でも目標となる心拍数が変わります。

カルボーネン法では「予備心拍数」を使って計算する

カルボーネン法の基本となるのが、最大心拍数から安静時心拍数を引いた「予備心拍数(HRR)」です
計算式は「目標心拍数=(最大心拍数-安静時心拍数)×運動強度+安静時心拍数」となります。
例えば最大心拍数180bpm、安静時心拍数60bpmで60%の強度を設定する場合、(180-60)×0.6+60=132bpmです。
Karvonenらは1957年の研究で、トレーニングに伴う心拍反応を検討しており、その後この考え方が運動強度設定に広く利用されるようになりました(Karvonen MJ et al., Annales Medicinae Experimentalis et Biologiae Fenniae, 1957)。

安静時心拍数を入れることで個人差を反映しやすい

最大心拍数が同じ180bpmでも、安静時心拍数が50bpmの人と70bpmの人では、心拍数が動ける範囲が異なります。
60%HRRで計算すると、安静時50bpmなら128bpm、70bpmなら136bpmとなります。
つまりカルボーネン法は「最大値の何%か」だけではなく、安静時から最大時までの心拍数の幅を基準に強度を決める方法です。
Swainらが63名を対象に行った研究では、予備心拍数(HRR)を基準にした運動強度は、VO2maxそのものに対する割合よりも、「安静時から最大運動時までにどれだけ酸素摂取量を増やせるか」を示すVO2 Reserve(VO2R)の割合とよく一致することが報告されています。
つまり、安静時心拍数を含めて計算するカルボーネン法は、身体が安静時からどの程度強く働いているかを反映しやすい方法と考えられています(Swain DP, Leutholtz BC, Medicine & Science in Sports & Exercise, 1997)。

カルボーネン法と「最大心拍数×%」は何が違う?

カルボーネン法と「最大心拍数×%」は何が違う?

目標心拍数には、最大心拍数へそのまま割合を掛ける方法もあります。
計算は簡単ですが、安静時心拍数が考慮されません。
そのため、同じ「60%」でもカルボーネン法とは異なる心拍数になります。

単純な%計算では安静時心拍数が反映されない

最大心拍数180bpmの人が60%の強度を設定する場合、単純な「最大心拍数×60%」では108bpmになります。
一方、安静時心拍数60bpmとしてカルボーネン法を使うと132bpmです。
同じ「60%」という表示でも24拍の差が生まれます。
これは計算の基準となる範囲が異なるためです。
前者は0〜最大心拍数を基準にしていますが、カルボーネン法は安静時心拍数〜最大心拍数までの範囲を利用します。
そのため「60%HRmax」と「60%HRR」は同じ運動強度を意味しません。
心拍ゾーンを設定するときは、どちらの計算方法を使っているか確認することが大切です。

%HRRは%VO2Rとの対応が研究で確認されている

Swainらが成人63名を対象に行った1997年の研究では、予備心拍数の割合(%HRR)はVO2maxに対する割合(%VO2max)ではなく、安静時から最大運動時までの酸素摂取量の幅を基準にした予備酸素摂取量の割合(%VO2R)とよく対応することが報告されました。
さらに1998年には、成人50名を対象としたトレッドミル運動でも同様の関係が確認されています。
これらの研究は、安静時心拍数を含めて計算するカルボーネン法が、有酸素運動の強度を設定する方法として用いられる生理学的な根拠の一つとなっています。
ただし、心拍数と酸素摂取量の関係には個人差があるため、計算した目標心拍数は絶対的な数値ではなく、運動強度を管理するための目安として活用することが大切です(Swain DP et al., Medicine & Science in Sports & Exercise, 1997, 1998)。

計算方法最大心拍数180・安静時60・60%の場合特徴
最大心拍数×60%108bpm最大心拍数のみを使用
カルボーネン法(60%HRR)132bpm最大心拍数と安静時心拍数を使用

カルボーネン法で目標心拍数を正しく計算する手順

カルボーネン法で目標心拍数を正しく計算する手順

カルボーネン法では、最大心拍数、安静時心拍数、設定したい運動強度の3つが必要です。
特に安静時心拍数は測定条件で変わるため、できるだけ落ち着いた状態で確認することがポイントです。

ステップ1|最大心拍数と安静時心拍数からHRRを求める

最初に「最大心拍数-安静時心拍数」で予備心拍数を計算します。
最大心拍数180bpm、安静時心拍数60bpmなら、HRRは120bpmです。
最大心拍数については「220-年齢」などの推定式がありますが、年齢から求めた値には個人誤差があります。
カルボーネン法の計算精度も、入力する最大心拍数の精度に左右されるため、年齢推定値を絶対的な上限として扱わないことが重要です。

ステップ2|HRRに運動強度を掛けて安静時心拍数を足す

HRRが120bpmの場合、50%なら「120×0.5+60=120bpm」、60%なら132bpm、70%なら144bpmです。
このように運動目的や体力に応じて割合を変えることで、目標心拍数の幅を設定できます。
ACSMの運動処方に関するポジションスタンドでも、%HRRや%VO2Rは有酸素運動の強度を設定する方法として使用されています。
ただし、運動強度は心拍数だけで決めるものではありません。
GarberらによるACSMの運動処方に関するガイドラインでは、運動プログラムは一律に設定するのではなく、その人の普段の身体活動量、体力・身体機能、健康状態、運動に対する身体の反応、目標などに応じて調整することが推奨されています。
そのため、カルボーネン法で計算した目標心拍数だけで運動強度を判断するのではなく、実際に運動したときの身体の反応や自覚的なきつさも確認しながら、自分に合った負荷へ調整することが大切です(Garber CE et al., Medicine & Science in Sports & Exercise, 2011)。

運動強度計算式(最大180・安静時60)目標心拍数
40%HRR120×0.4+60108bpm
50%HRR120×0.5+60120bpm
60%HRR120×0.6+60132bpm
70%HRR120×0.7+60144bpm

カルボーネン法を運動強度管理に使うときの注意点

カルボーネン法を運動強度管理に使うときの注意点

カルボーネン法は便利な方法ですが、計算した心拍数を必ず守れば安全・効果的というわけではありません。
安静時心拍数や最大心拍数は条件によって変化し、薬剤や体調によって心拍反応が通常と異なる場合もあります。

安静時心拍数はできるだけ同じ条件で確認する

安静時心拍数は体調や生活状況によって変動するため、一度の測定値だけで判断するのではなく、できるだけ同じ条件で継続して確認することが大切です。
また、β遮断薬など心拍数に影響する薬を服用している場合は、一般的な心拍数の計算方法がそのまま当てはまらないことがあります。
Wonischらの研究では、β遮断薬の使用によって安静時だけでなく、有酸素性閾値、無酸素性閾値、最大運動時の心拍数も低下し、%最大心拍数や%HRRを使った運動強度設定には限界があることが示されています。
そのため、治療中の疾患がある方や心拍数に影響する薬を服用している方は、カルボーネン法の計算値だけで運動強度を決めず、医師や医療専門職へ相談してください(Wonisch M et al., European Journal of Cardiovascular Prevention & Rehabilitation, 2003)。

計算した心拍数だけでなく「きつさ」も確認する

目標心拍数は運動強度を管理する便利な目安ですが、体調や気温、疲労によって同じ運動でも心拍数は変化します。
そのため、カルボーネン法で算出した値だけを追い続けるのではなく、「会話できる程度」「ややきつい」といった自覚的運動強度も合わせて確認しましょう。
ACSMでは、心拍数や酸素摂取量だけでなく自覚的運動強度も運動処方に用いられています。
また、胸痛、めまい、失神しそうな感覚、通常とは異なる強い息切れなどがある場合は、計算上の目標心拍数内でも運動を中止してください。
心拍数は安全を保証する数字ではなく、身体の反応を見る一つの指標です。

まとめ|カルボーネン法は安静時心拍数を含めて運動強度を考えられる

まとめ|カルボーネン法は安静時心拍数を含めて運動強度を考えられる

カルボーネン法は、最大心拍数だけでなく安静時心拍数も使って目標心拍数を求める方法です。
「最大心拍数-安静時心拍数」で算出した予備心拍数(HRR)を使うことで、単純な「最大心拍数×%」よりも個人差を反映しやすい特徴があります。
Swainらの研究でも、%HRRは%VO2maxよりも%VO2Rとよく対応することが報告されており、有酸素運動の強度設定に活用される根拠の一つとなっています。
ただし、最大心拍数や安静時心拍数には個人差があり、体調や服薬の影響によって心拍反応が変わることもあります。
そのため、計算した目標心拍数だけに頼るのではなく、自覚的なきつさやその日の体調もあわせて確認することが大切です。
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