マラソン後半に足が動かない原因は?失速を防ぐための対策を解説
フルマラソンで30kmを過ぎた頃から急に足が重くなり、「気持ちは走りたいのに脚が前に出ない」という経験はありませんか?
マラソン後半の失速は、単純な脚力不足だけで起こるものではありません。
筋グリコーゲンの減少、筋肉へのダメージ、序盤のオーバーペース、暑さや脱水など複数の要因が重なって起こると考えられています。
過去の大会で後半に失速した人は、ただ走行距離を増やすのではなく「なぜ足が動かなくなったのか」を振り返ることが重要です。
この記事では、後半に足が動かなくなる主な原因と、次のマラソンへ向けた対策を解説します。
マラソン後半に足が動かなくなる主な原因

マラソン後半の失速には、一つだけの原因があるわけではありません。
特に重要なのが、長時間運動によるエネルギーの減少と、42.195kmを走ることで蓄積する筋疲労です。
筋グリコーゲンの減少でエネルギーを作りにくくなる
マラソンでは、筋肉や肝臓に蓄えられたグリコーゲンが重要なエネルギー源になります。
しかし、長時間走り続けるとその量は徐々に減少します。
長時間の持久運動では体内に蓄えた糖質だけでは十分でないため、運動中の糖質補給によって疲労を遅らせられることが報告されています。
Burkeらのレビューでは、長時間の持久系競技では1時間あたり30〜60g、2.5時間を超える競技では条件に応じて最大90g程度の糖質摂取が選択肢として示されています。
ただし、必要量や胃腸が受け付ける量には個人差があるため、大会当日に初めて試すのではなく、練習から補給方法を確認しておくことが大切です(Burke LM et al., Journal of Sports Sciences, 2011)。
筋肉へのダメージも後半のペース低下に関係する
エネルギーが残っていても、脚の筋肉そのものが疲労するとペースを維持しにくくなります。
Del Cosoらが市民ランナー40人を調べた研究では、マラソン後半のペース低下が大きかったランナーほど、レース後のミオグロビンやLDHなど筋損傷に関連する血液マーカーが高い傾向が確認されました。
この研究だけで「筋損傷が失速の原因」と断定することはできませんが、後半の失速には心肺機能だけでなく、脚が長時間の着地衝撃や筋収縮に耐える能力も関係すると考えられます(Del Coso J et al., PLOS ONE, 2013)。
後半の失速を防ぐには序盤の走り方と補給を見直す

マラソン後半まで足を動かし続けるには、30km以降だけを意識するのではなく、スタート直後からの負荷を管理することが重要です。
前半の数秒のオーバーペースが積み重なると、後半になって大きな失速につながる可能性があります。
前半で「貯金」を作ろうとしすぎない
2026年にボストンマラソン完走者78,912人を解析した研究では、一定に近いペースで走ったランナーは、後半に大きくペースを落としたランナーより良好な完走タイムと関連していました。
また、ペース変動が大きいグループでは、終盤に20%を超えてペースが低下する「壁」が多くみられました。
これは観察研究のため一定ペースが速い記録を直接生み出したと証明するものではありませんが、後半までペースを維持したいランナーにとって、序盤からペースを上げすぎず、できるだけ安定したペースで走ることの重要性を考える参考になります(Dong Q, Li Z. Pacing strategy patterns and performance outcomes in marathon running: A large-scale analysis of split time data. PLOS ONE. 2026;21(7):e0352808. DOI: 10.1371/journal.pone.0352808. PMID: 42467613.)。
給水と糖質補給は後半になってから慌てない
「足が止まってからジェルを取る」のではなく、補給は疲労が強くなる前から計画しておくことが大切です。
Cadeらが実際のマラソンを調べた研究では、後半のペース低下には体液量の減少や高体温、エネルギー供給など複数の要因が関係することが示されました。
気温が高い大会では発汗量も増えるため、糖質だけでなく水分補給も重要です。
一方で必要な水分量には気温や発汗量による個人差があります。
練習時から「何分ごとに何を取ると胃腸トラブルなく走れるか」を確認し、自分の補給パターンをつくっておきましょう(Cade R et al., European Journal of Applied Physiology, 1992)。
後半まで足を動かすには持久力の土台を高める

マラソン後半の失速対策では、ロングランだけでなく、酸素を利用して長時間エネルギーを作り続ける身体の能力も重要です。
その一つに、骨格筋のミトコンドリアに関わる適応があります。
持久系トレーニングではミトコンドリアの量や機能が変化する
ミトコンドリアは、筋肉の中で酸素を利用してATPというエネルギーを作る重要な器官です。
持久系トレーニングを継続すると、骨格筋のミトコンドリア量や呼吸機能に適応が起こることが報告されています。
Granataらのレビューでは、トレーニング量はミトコンドリア量の変化に、運動強度はミトコンドリアの呼吸機能の変化に関係する可能性が示されています。
つまり、「ミトコンドリアを活性化すれば必ずマラソン後半が楽になる」と単純には言えませんが、持久系トレーニングによるミトコンドリア関連の適応は、長時間運動を支える身体づくりの一要素と考えられます(Granata C et al., Sports Medicine, 2018)。
低酸素環境も持久系トレーニングの選択肢になる
SOLERAでは、常圧低酸素環境でトレーニングに取り組めます。
Ponsotらが持久系アスリートを対象に行った研究では、週2回・6週間の常圧低酸素トレーニング後にVO2maxや疲労困憊までの時間が改善し、骨格筋のミトコンドリア機能にも変化が報告されました。
一方、別の低酸素研究では通常酸素トレーニングよりミトコンドリアの適応が大きくならなかった例もあり、2025年のメタ分析でも通常酸素環境に対するVO2maxやパフォーマンスの明確な上乗せ効果は確認されていません。
そのため、低酸素トレーニングだけで「後半の足が止まらなくなる」とは言えませんが、通常とは異なる酸素条件で心肺や持久系能力へ刺激を加える選択肢として活用できます(Ponsot E et al., Journal of Applied Physiology, 2006/Dorelli G et al., Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports, 2025)。
まとめ|後半に足が動かない原因を一つずつ見直そう

マラソン後半に足が動かなくなるのは、単純な走り込み不足だけが原因ではありません。
筋グリコーゲンの減少、筋肉へのダメージ、序盤のオーバーペース、給水・補給、暑さなど、複数の要因が重なって失速することがあります。
過去の大会で後半に失速した人は、「もっと長く走ればいい」と考える前に、何kmからペースが落ちたのか、前半は予定より速くなかったか、補給は十分だったか、脚の筋疲労が強くなかったかを振り返ってみましょう。
そのうえで、長時間走る練習と日々の持久系トレーニングを組み合わせ、後半まで身体を動かせる土台をつくることが重要です。
SOLERAでは、常圧低酸素環境を活用し、通常とは異なる酸素条件で心肺や持久系能力に刺激を加えるトレーニングに取り組めます。
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