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VO2maxの測り方|スマートウォッチの推定は正確?誤差が生じる仕組みを解説

スマートウォッチに表示されるVO2maxを見て、「実際の心肺機能と同じ数値なの?」「昨日より下がったけれど体力が落ちた?」と疑問を感じる方も多いのではないでしょうか?
結論からいうと、スマートウォッチのVO2maxは呼吸した酸素量を直接測定しているのではなく、心拍数や走行速度などから計算した推定値です。
そのため便利な指標である一方、測定条件によって誤差が生じます。
この記事では、「どのような仕組みでVO2maxを推定し、なぜ実測値との差が生まれるのか?」に絞って解説します。

スマートウォッチのVO2maxはどうやって測っている?

スマートウォッチのVO2maxはどうやって測っている?

スマートウォッチに表示されるVO2maxは、医療機関や研究施設で行う呼気ガス分析のように、吸った酸素と吐いた酸素を直接測定しているわけではありません。
運動中に取得した複数のデータから「この運動負荷に対して心拍数がどのくらい上がったか」を解析し、VO2maxを推定しています。

心拍数と走行速度の関係からVO2maxを推定する

スマートウォッチによるVO2max推定では、心拍数、ランニング速度、年齢、性別、身長、体重などの情報を組み合わせる方法が用いられています。
Parakらが健康な成人24名を対象に行った研究では、手首式光学心拍計で測定した心拍数とGPSによる走行速度に、年齢、性別、体重、身長などの情報を組み合わせた生理学的モデルを用いてVO2maxを推定しました。
屋外での最大下ランニングから得られたVO2max推定値は、スポーツ研究室で得られた基準値に対して平均絶対パーセント誤差5.2%でした。
この研究からも、ウェアラブル機器に表示されるVO2maxは酸素摂取量を直接測定したものではなく、心拍数や走行速度などから算出された推定値であることが分かります(Parak J et al., JMIR mHealth and uHealth, 2017)。

実測VO2maxは呼気ガス分析で測定する

VO2maxをより直接的に評価する基準となる方法は、トレッドミルや自転車エルゴメーターで運動強度を段階的に高めながら、呼気ガス分析装置で酸素摂取量を測定する運動負荷試験です。
スマートウォッチの研究でも、この呼気ガス分析による測定値を基準として精度が検証されています。
2025年のLambeらの研究では、30名を対象にApple Watchの推定値とトレッドミルでの間接熱量測定を比較し、両者には一定の差が確認されました。
つまり、ウォッチのVO2maxは実測値そのものではなく、実測値を予測するための推定指標として理解する必要があります(Lambe R et al., PLOS ONE, 2025)。

スマートウォッチのVO2maxに誤差が生じる理由

スマートウォッチのVO2maxに誤差が生じる理由

VO2max推定の材料となる心拍数や速度に誤差が含まれれば、最終的に表示されるVO2maxにも影響します。
また、身体の心拍反応は毎日完全に同じではありません。
そのため、同じ人が似たペースで走っても、測定条件によって推定値が変わることがあります。

心拍数の測定誤差がVO2max推定にも影響する

多くのスマートウォッチは、手首に光を当てて血流の変化を捉える光電式容積脈波記録法(PPG)で心拍数を測定します。
手軽な反面、腕の振動、ウォッチの装着状態、皮膚との接触などによって誤差が生じる可能性があります。
VO2max推定では「一定の速度で走ったときに心拍数がどの程度だったか」が重要な情報となるため、実際より心拍数が高く測定されれば体力を低く、低く測定されれば高く推定する方向へ影響する可能性があります。
心拍数の誤差が、そのままVO2maxの推定誤差につながり得る点がウォッチ測定の特徴です。

暑さ・疲労・脱水でも心拍数と速度の関係が変化する

同じランニング速度でも、心拍数は常に同じとは限りません。
暑い日や脱水している状態、疲労が残っている日などは、普段と同じペースでも心拍数が高くなる場合があります。
スマートウォッチは身体の状態を直接分析しているのではなく、取得した心拍数と運動負荷の関係からVO2maxを推定します。
そのため、心肺機能そのものが急に低下していなくても、心拍反応が通常と異なるだけで推定結果が変動する可能性があります。
推定値の誤差を理解するには、「心拍数は体力だけで決まる数値ではない」という点を押さえることが重要です。

スマートウォッチのVO2maxはどの程度正確なのか?

スマートウォッチのVO2maxはどの程度正確なのか?

研究結果を見ると、スマートウォッチのVO2max推定には一定の有用性がある一方、実測値と完全に一致するわけではありません。
特に個人単位では数mL/kg/分以上の差が生じることもあり、研究対象者の体力レベルによって誤差が変わる可能性も報告されています。

研究では実測値との間に数%〜10%以上の誤差も報告

Molina-GarciaらのINTERLIVE Networkによるシステマティックレビュー・メタ分析では、消費者向けウェアラブルによるVO2max推定の妥当性を検証した14研究が解析されました。
運動時の情報を用いるウェアラブルでは基準値との平均的な差は小さかったものの、個人レベルでは推定誤差が大きくなる可能性が示されています。
また、Lambeらが30名を対象に行った2025年の検証研究では、Apple WatchのVO2max推定値は間接熱量測定による値より平均6.07 mL/kg/分低く、平均絶対パーセント誤差は13.31%でした。
これらの研究から、スマートウォッチのVO2maxは心肺体力を手軽に推定できる指標ではあるものの、呼気ガス分析などによる測定値と同等の精度を持つ実測値として扱うことは適切ではありません(Molina-Garcia P et al., Sports Medicine, 2022/Lambe R et al., PLOS ONE, 2025)。

トレーニングレベルによって推定精度が変わる可能性もある

2026年に掲載されたEngelらの研究では、持久系アスリート35名を対象にスマートウォッチと呼気ガス分析によるVO2maxを比較したところ、ウォッチは全体で約4.1〜4.7mL/kg/分低く推定しました。
さらに、中程度にトレーニングされた群では平均絶対パーセント誤差が2.8〜4.1%だったのに対し、高度にトレーニングされた群では9.4〜10.4%となりました。
推定アルゴリズムがすべての体力レベルに同じ精度で当てはまるとは限らないことを示す結果であり、VO2maxが高いランナーほど推定値との差が生じる可能性にも注意が必要です(Engel FA et al., European Journal of Applied Physiology, 2026)。

測定条件が変わるとVO2max推定値も変わる可能性がある

測定条件が変わるとVO2max推定値も変わる可能性がある

スマートウォッチのVO2maxは、心拍数と運動負荷の関係を利用するため、走る環境が変われば推定条件も変化します。
屋外と室内、平地と坂道、通常酸素環境と低酸素環境など、身体にかかる生理的負荷が異なる状況では、同じ速度でも心拍反応が変わる可能性があります。

いつもと違う環境では心拍反応が変化することがある

スマートウォッチによるVO2max推定では、心拍数や走行速度などのデータが利用されます。
Parakらの研究では、手首で測定した心拍数とGPSによる走行速度に、年齢、性別、体重、身長を組み合わせた生理学的モデルからVO2maxを推定しています。
そのため、心拍数や走行速度の関係が普段と異なる条件では、推定値にも影響する可能性があります。
ただし、坂道や低酸素環境によってスマートウォッチのVO2maxがどの程度変化するかについては、機種やアルゴリズムによる違いもあり、現時点で一律には判断できません。
異なる環境で得られたVO2maxを比較するときは、実際の心肺機能の変化だけでなく、測定条件の違いが含まれる可能性も考慮する必要があります(Parak J et al., JMIR mHealth and uHealth, 2017)。

低酸素トレーニングで「最大心拍数が上がる」とは断定できない

低酸素環境については、「トレーニングによって最大心拍数そのものが向上する」という効果は現時点で確立されていません。
一方、間欠的低酸素トレーニングについて19論文・27研究を解析したメタ分析では、対照群と比較してVO2maxが平均3.20mL/kg/分高くなったことが報告されています。
ただし、著者ら自身が研究数と質に限界があるとしており、すべての人に同じ効果が得られるとは限りません(The effects of intermittent hypoxic training on the aerobic capacity of exercisers: a systematic review and meta-analysis, 2023)。

まとめ|スマートウォッチのVO2maxは「測定値」ではなく推定値

まとめ|スマートウォッチのVO2maxは「測定値」ではなく推定値

スマートウォッチに表示されるVO2maxは、酸素摂取量を直接測定しているわけではありません。
主に心拍数、ランニング速度、年齢、体格などの情報から、VO2maxをアルゴリズムで推定しています。
そのため、心拍センサーの誤差だけでなく、暑さ、疲労、脱水、坂道、トレーニングレベルなどによって心拍数と走行速度の関係が変われば、推定値にも影響する可能性があります。
研究でもスマートウォッチのVO2maxと呼気ガス分析による実測値には一定の差が確認されています。
ウォッチによる推定は手軽に取得できるメリットがありますが、呼気ガス分析と同じものではありません。
特に精度が必要な評価では、運動負荷試験と呼気ガス分析が基準となります。
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