Zone2トレーニングはVO2maxに効果ある?心拍数の考え方と続け方
「VO2maxを上げるならZone2トレーニングがいい」と聞いて、ゆっくり走り続けているものの、本当に効果があるのか疑問に感じていませんか?
結論からいうと、Zone2は持久力づくりの土台として重要な低強度トレーニングですが、Zone2だけを続ければVO2maxが大きく向上するとは言い切れません。
さらに、心拍数だけでZone2を決めると、体感とのズレが生じることもあります。
この記事では、Zone2の位置づけとVO2maxとの関係、心拍数の考え方、低酸素環境で行う場合の注意点に絞って解説します。
Zone2トレーニングとは?まず定義の違いを理解しよう

Zone2について調べると、サイトやスマートウォッチによって心拍数の範囲が違うことがあります。
これは間違いではなく、運動強度を「5ゾーン」で分ける方法と「3ゾーン」で分ける方法が混在していることが主な理由です。
一般的なZone2は会話を続けやすい低強度運動
市民ランナーの間で使われるZone2は、5ゾーンモデルの低強度域を指すことが多く、最大心拍数のおよそ60〜70%前後などが目安として用いられます。
呼吸には余裕があり、会話を続けながら走れる程度の強度です。
ただし、心拍ゾーンの区切り方には複数の方法があり、「最大心拍数の何%なら必ずZone2」と決められるわけではありません。
Seilerのレビューでは、競技レベルの高い持久系選手はトレーニングの大部分を乳酸濃度が低い低強度域で行っていることが報告されており、低強度運動が持久系トレーニングの土台として広く利用されています(Seiler S, International Journal of Sports Physiology and Performance, 2010)。
研究論文の「Zone2」は別の強度を指すことがある
注意したいのが、運動生理学の研究で用いられる3ゾーンモデルです。
この場合、Zone1は第一換気性閾値より下、Zone2は第一換気性閾値と第二換気性閾値の間、Zone3は第二換気性閾値より上を指します。
つまり、一般的な5ゾーンモデルで「Zone2」と呼ばれる低強度運動と、研究論文の3ゾーンモデルにおけるZone2は同じではありません。
運動強度の「Zone」は、すべての研究やスマートウォッチで同じ基準が使われているわけではありません。
Matzkaらは、持久系トレーニングの研究でよく用いられる3ゾーンモデルについて、Zone1を低強度、Zone2を中強度、Zone3を高強度として、生理学的な指標をもとに分類しています。
また、同じトレーニングでも、心拍数や速度など何を基準にするかによって各ゾーンに分類される時間が異なることも報告されています。
そのため、「Zone2に効果がある」という研究を見るときは、一般的なスマートウォッチの5ゾーン分類と同じZone2とは限らないことに注意し、研究でどのような基準が使われているかを確認することが大切です(Matzka M et al., Sports Medicine – Open, 2022)。
Zone2トレーニングはVO2max向上に効果がある?

Zone2とVO2maxの関係は、「効果がある・ない」の二択では説明できません。
低強度運動を継続することで持久系能力に必要な適応は期待できますが、VO2maxを効率よく刺激するには高強度トレーニングも重要と考えられています。
Zone2は持久力の土台になるがVO2max向上を保証するものではない
低強度トレーニングは、長い運動時間を確保しながら身体への負担を抑えやすく、持久系トレーニングの基本として利用されています。
Seilerのレビューでは、競技レベルの高い持久系アスリートのトレーニングは、およそ80%が低強度、残りを高強度運動が占めるパターンが多いことが示されています。
一方、これは「低強度運動だけがVO2maxを高める」という意味ではありません。
低強度で運動量を確保しつつ、一部に高強度運動を組み合わせることが持久系トレーニングでは一般的です。
そのため、Zone2はVO2max向上の直接的な特効薬ではなく、質の高い高強度練習を行うための土台として考えると分かりやすいでしょう(Seiler S, 2010)。
VO2maxを高めるならZone2だけに固定しない
2025年にRosenblatらが13研究・348名の持久系アスリートを解析したシステマティックレビュー・ネットワークメタ分析では、低強度を多く行うピラミダル型と、低強度に加えて高強度を取り入れるポラライズド型の間で、全体としてVO2max改善に明確な差は認められませんでした。
一方、競技レベルによって反応が異なる可能性も示されています。
また、2024年のシステマティックレビューでは、低強度を多く行いながら15〜20%程度の高強度トレーニングを組み合わせる方法でVO2max改善が報告されています。
つまり、Zone2は重要ですが、VO2maxを目的とするならZone2だけに限定せず、高強度運動との組み合わせを考えることが現実的です(Rosenblat MA et al., Sports Medicine, 2025/Nøst HL et al., Sports, 2024)。
Zone2は心拍数だけで判断できる?実測データから考える

Zone2を始めるとき、多くの人がスマートウォッチの心拍ゾーンを参考にします。
しかし、計算式で求めた心拍ゾーンと実際の体感が一致しないことは珍しくありません。
ここではSOLERAの実測例を使って考えてみます。
最大心拍数180bpmなら計算上のZone2は108〜126bpm
SOLERAの実測最大心拍数は180bpmです。
最大心拍数の60〜70%をZone2とする簡易的な設定なら、心拍数は108〜126bpmとなります。
しかし、実際に本人が「楽に走っている」と感じたランニングでも心拍数149bpmを記録した例があります。
149bpmは最大心拍数180bpmに対して約83%であり、単純な60〜70%HRmaxのZone2からは大きく外れます。
これは一人の実測例であり一般化はできませんが、「体感が楽=計算上のZone2」とは限らないことを示す分かりやすい例です。
心拍数はその日の体調や環境にも影響されるため、計算値だけで運動強度を決めないことが重要です。
Zone2は心拍数・呼吸・体感を組み合わせて考える
Zone2を管理するときは、スマートウォッチに表示された心拍数だけでなく、呼吸や自覚的運動強度も確認しましょう。
例えば「楽に会話を続けられる」「呼吸が乱れすぎない」「長時間続けられそう」といった感覚は、低強度運動を判断する補助になります。
また、最大心拍数を年齢から推定している場合、その最大心拍数自体に誤差があるため、Zone2の範囲もずれる可能性があります。
心拍ゾーンは身体を機械的に区切る境界線ではありません。
普段から同じ条件で心拍数と体感を記録し、自分自身の傾向を把握することで、より現実的なZone2トレーニングにつなげられます。
低酸素環境でZone2トレーニングを行うときの考え方

低酸素環境では通常酸素環境とは心拍数や酸素供給の反応が異なるため、普段使っているZone2の心拍数をそのまま当てはめればよいとは限りません。
低酸素環境では「同じ速度」ではなく「身体にかかっている負荷」を確認することが重要です。
低酸素環境では同じ運動強度でも外的な負荷が変わる
低酸素環境では、通常酸素環境より低い速度やパワーでも身体への生理的負荷を確保できる場合があります。
Haufeらが健康な男性20名を対象に行ったランダム化試験では、低酸素群と通常酸素群を同じ心拍数でトレーニングさせたところ、低酸素群では運動時の機械的負荷が有意に低かったにもかかわらず、運動能力は両群で改善しました。
また、標高3,000m相当の急性低酸素環境で最大心拍数の70%に心拍をそろえた研究でも、低酸素条件では通常酸素条件より低い運動負荷で同じ心拍数に達しています。
低酸素では平地の速度や傾斜にこだわらず、心拍反応を確認しながら負荷を調整する必要があります(Haufe S et al., Medicine & Science in Sports & Exercise, 2008)。
低酸素Zone2が通常環境より優れるとは断定できない
低酸素環境で低強度運動を行えば、通常酸素環境のZone2よりVO2maxが大きく向上すると断定できるエビデンスは現時点では十分ではありません。
実際、低酸素トレーニングの研究ではVO2max改善が報告された研究がある一方、通常酸素条件との差が認められない研究もあります(Dorelli G et al., Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports, 2025)。
また、研究で使われる低酸素濃度や運動強度、対象者もさまざまです。
そのため、低酸素Zone2は「通常のZone2より優れた方法」と考えるのではなく、比較的低い走速度でも心肺へ刺激を加えられる可能性があるトレーニング環境の一つとして捉えるのが適切です。
心拍数を確認しながら、自分の体力に合わせて強度を調整することが大切です。
まとめ|Zone2はVO2maxの「土台」として活用しよう

Zone2トレーニングは、VO2maxを直接大きく高めるためだけのトレーニングではありません。
低強度で運動量を確保し、持久力づくりを進めながら、高強度トレーニングを継続できる身体の土台をつくるという位置づけで考えると分かりやすいでしょう。
VO2maxを目的とする場合も、Zone2だけに固定せず、体力や目標に応じて異なる強度のトレーニングを組み合わせることが重要です。
また、「最大心拍数の60〜70%だからZone2」と計算するだけでは、自分の体感や実際の身体反応と一致しない場合があります。
SOLERAの実測例でも、最大心拍数180bpmに対して計算上のZone2は108〜126bpmですが、本人が楽だと感じるランニングで149bpmを記録しています。
これは個人例ですが、心拍ゾーンを一律の数値だけで判断しないことの重要性を示しています。
SOLERAでは、常圧低酸素環境で心拍数を確認しながらトレーニングに取り組めます。
「Zone2を始めたけれど、自分の設定が合っているのか分からない」「心拍数を意識しながら持久力や心肺機能を高めたい」という方は、自分の身体の反応を確認しながらトレーニングすることが大切です。
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